トップ > オルター通信一覧 > 最新電磁波事情概観13 (最終回)

2019.10.29 オルター通信1617号
最新電磁波事情概観13 (最終回)

欧州各国は高周波規制に乗り出している
大久保貞利(月刊誌「世界」2014年5月号掲載「最新電磁波事情概観(下)」より転載)
<13> 電磁波利用に規制ルールが求められている

電磁波は「第2のアスベスト」といわれる。目に見えないし、匂いもない。アスベストは時限爆弾のように作用する。一定の潜伏期間の後、肺がんや悪性中皮腫などの健康被害をもたらすからである。
IARC(国際がん研究機関)のインターフォン研究は「携帯電話を10年以上累積使用すると脳腫瘍発症リスクが高まる」としている。まさに潜伏期間である。
アスベストは、耐熱性、絶縁性、保湿性にすぐれ、加工もしやすいため、「魔法の鉱物」と重宝された。しかし効用以上に人体に害があるのではどうしようもない。携帯電話に代表される電磁波利用の効用はいまさら説明の必要もあるまい。だが「もし電磁波が生体にとってリスクがある」と確定した時の社会的インパクトはアスベストを超えるであろう。
いまだ電磁波のリスクは「灰色」「不確実」の域を出ていない。こうした悩ましい段階の理性的な対応が「予防原則」であろう。予防原則(precautionary principle)とは、人の生命、健康及び自然環境に対して、大きなリスク(悪影響)を及ぼす可能性のある対象(物質、因子、活動等)について、たとえそのリスクの科学的証明(証拠)が不十分な段階であっても、なんらかの防護対策を施そうという考えである。
「もし後になって問題がないとわかったらどうするのか」と予防原則批判派は言う。問題がなかったら、それは喜ばしい限りだ。
「安全を担保するためのコスト」と割り切ればいい。後でリスクが確定した場合の危険性のほうがはるかに重大だ。その時の被害の補償コストを考えれば、予防的コストなど取るに足らない。欧州、とくに北欧で予防原則が採用されているのは、「後で被害が出てから補償するとかえってコストがかかる。予防原則に基づく対策はむしろコストがかからない方法だ」という合理的な考えが背景にある。だが日本政府、電力会社、携帯会社、電機メーカー等は「リスクが不確実だから電磁波対策は取らない」という姿勢を頑なに保持している。
21世紀は環境の世紀といわれる。そろそろ私たちは「大人の選択」をする時代に来たのではないだろうか。
WHOの低周波(極低周波)環境保健基準は、新設の電磁波発生施設や電気製品の新規開発から電磁波低減対策に乗り出し、送電線や変電所等の施設の新設にあたっては住民を含めた利害関係者に情報を開示し事前に協議するように、と勧告した。これはいわば、電磁波分野で規制の新ルールを構築しようということに他ならない。また各種審議会や対策委員会に、関連企業からの利益供与のない専門家や、住民や環境団体等をメンバーとして入れていくことも重要である。業界を所管する省庁から独立した組織を立ち上げなければ、国民的理解、支持は得られないであろう。
電磁波利用を否定しているのではない。利用にあたってそれなりの規制ルールを確立すべきではないか、と主張しているのである。少なくとも、子どもたちや病人といった社会的弱者が安心して暮らせるように、学校、保育園、幼稚園、病院、公園、公共的施設、老人ホーム等が存在する地域で、電磁波発生施設(変電所、高圧送電線、基地局等)を新設する場合は厳しい規制をすべきだし、健康被害を訴えてる人がいるかぎり、被害の実態調査を公正な立場の専門家に委嘱して行うというのが道理である。電磁波問題は国民的レベルで議論する段階にきているのではないだろうか。

 

休会またはその他の理由により、
現在ご注文機能を停止しております。

注文再開を希望される方は
オルター本部までご一報ください。

お電話から
0721-70-2266
WEBから
info@alter.gr.jp
CLOSE