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2016.11.22 オルター通信1467号
発達障害-脳と体の異変

発達障害-脳と体の異変
CS支援センター事務局長 広田しのぶ
【「CS支援第93号」より転載】

◇今、13人に一人という伝説
今年、初夏のある朝、私は信じられないような数字を耳にした。それは朝の番組ではおそらく高い視聴率を維持しているNHKの「あさイチ」のディレクターの報告だった。性同一性障害・LGBTの数が今や13人に一人の割合で存在するとのこと。そして、それぞれの代表の方々が非常にしっかりした話し方で現在の立場を説明し訴えていた。
はじめ、その数の多さに聞きまちがいかと思い、その後あちこち調べてみたが間違いではなかった。13人に一人とは何という数!
本人の意思の全く及ばないところで始まった運命を受け入れざるをえない人々は、家族にさえ打ち明けられず、自らを制することも不可能なそのありように戸惑い、どれほど悩み、苦しんだことだろう。この現状に関して本人にはまったく責任などない。私たちは未解明な医学の問題であるこの現実を決して興味本位に受け止めてはならない。
あまり表面には出てこないこれらの問題は人間関係や現在の社会整備など内部に多くの問題を抱えたまま深く静かに、現在も水面下で大きく拡がっているにちがいない。私たちはせめてありのままの現実を理解し、真摯に受け止め、対応を考える必要がある。
しかし、その一方で、なぜこんなことになってしまうのか、現在考えられる科学的な原因としてわかっていることだけでも、すぐ出来ることとして避けなくてはならない。そして、何より並行して生物学的、医学的な研究が非常に重要になってくる。

◇アポプカ湖のワニ
このことから10年以上記憶の片隅に燻ぶっていたある新聞の投稿記事を思い出した。投稿者はアメリカ在住の芥川賞作家米谷ふみ子氏。1986年、[過越しの祭]で芥川賞を受賞した米谷氏は、当時ロスアンジェルス・タイムズで3日間にわたって連載され、米国内で大きく話題になっていたアポプカ湖のワニの異変に関する膨大な記事を要約して日本の新聞に投稿されていた。
それはフロリダ州にあるアポプカ湖のワニが、雄なのか雌なのかはっきりしない、両性具有のワニがいるかと思うとどちらでもないものもいる、雄で卵を産もうとするものがいるなど、他の個体も通常ではありえない行動が多く見られるというもので、世界中で野生動物や魚類、鳥類も驚くほど同じような現象を起こしているということだった。
さらに読み進めると、人工的な殺虫剤や化学物質が子宮や卵子に浸透すること、これらの化学物質が間違ったシグナルを送り、ホルモンを妨げたり、ホルモンと似通った作用をしたりするが(いわゆる環境ホルモン)、殺虫剤の中でその作用をする主なものは、DDTとPCBであり、現在禁
止されていても湖や海岸など以前にそれを投げ捨てた場所では生息している動物にアポプカ湖のワニと同じような現象が見られると研究者は述べている。

◇原因を特定するのは困難だが
これらの検証から、いくつかの原因が考えられている。当時、この地域では周囲の農地で広く有機塩素系が使用されていた。また、湖に流れ込んでいる河の上流には有機塩素系(DDTやPCBなど)の農薬製造会社があり、事故を起こして大量の農薬が湖に流れ込んでいた、という事実も判明した。原因を特定するのは難しいが、通常では起こりえないことが特定の時期に特定の場所で起こっているのであれば、その現象の原因の一つと考えるのが妥当ではないか。
ワニなど両生類の一部は温度の高低で雌雄が決まるという。温暖化なども影響するといわれているが、両性具有やどちらでもない個体については説明に窮する。
DDTやPCBなど有機塩素系の農薬は分解しにくいことで有名なもの、数十年前使用されたものが現在も検出されることは珍しくない。この有機塩素系農薬は分解しにくいと言われ、代わって出てきたのが有機リン系の農薬である。分解されやすいとの触れ込みで農業、家庭用殺虫剤、白アリ駆除剤、畳の下の防ダニ加工やプラスチックの可塑剤まであらゆるものに用いられた。しかし、神経毒性を持つこの農薬もさまざまな問題を起こしており(日本における佐久の眼病など)、在米中からずっと有機リン系農薬の研究を続けられた石川哲先生は1996年米国環境医学アカデミーより学会最高賞の「ジョナサン・フォアマン賞」を受賞された。先生にはCS支援センターでも講演していただき、会報にまとめている。※CS支援第74号世界における化学物質過敏症の研究 動向-特に有機リン剤を中心に-

◇いじめの原因は
1990年代、石川哲先生にお聞きした有機リンの作用でもっとも印象に残っているのは、酵素を破壊するという事実である。かっとなるとき、気持ちが落ち込み何もする気がしないとき、酵素の働きが非常に重要だという。根性だけで解決出来る問題ではないのだ。キレる、死にたくなるなど、最近の世の中の事件や事故で歯止めがきかなくなることにも深く関係してくる。死にいたるまで続けられる幼い子どもへの虐待や集団でのいじめの原因は、しつけや心理学的な要因も否定はしないが、それだけではなく、脳や体の働きのもっと根源的なところでの変異の問題があるのではないか。
合成化学物質のあるものは、私たちが健康に生きていくために人間の体に本来備わっているしくみを破壊していくことが明らかになってきている。
2010年5月、ハーバード大学などの研究チームは“有機リン系の農薬を低濃度でも摂取した子どもは注意欠陥・多動性障害(ADHD)になりやすいとの研究結果をまとめて米国小児学会誌に発表した。2003年、国は住宅の床下の白アリ駆除剤クロルピリホス(有機リン)を禁止したが、その後に少しはましなものがやってきたわけではない。

◇子どもの脳
前号にも書いたとおり、発達過程にある子どもの脳は農薬など神経系に障害を与える化学物質に特に弱いと考えられる。このことを多くの人々に知っていただきたく、繰り返しお伝えする。
厚生労働省は、発達障害は脳の機能障害であって、その症状が通常、低年齢で発現するものをいう、と定めている。母親の愛情不足やしつけが行き届かないなどという問題だけで発現するものではない。原因は科学的、医学的に解明されなくてはならない。一部の医師や脳科学者が警告しているように、衣食住の中の合成化学物質のあるものは人間の体の機能を狂わせる。そしてまた、子どもたちの正常な発育を阻害する。
現在、インターネットを開けば発達障害に関するさまざまな情報や支援団体の訴えが満載だが、玉石混交のこれらの情報の中で信頼にたるものを選び取るためには、こちらの力量も問われる。最初の投階としてそれらは必要なことではあるが、治療についてはどうなのか。心理面からのアプローチ、精神病薬投与のほかに何か有効な治療に関する情報はあるのだろうか?

◇発達障害の治療について
そもそも精神病薬は発達障害の根本的な回復を目指して投与されているものだろうか?
前号に掲載した「小学校の現状-A市の場合」に「投薬することで、何とか落ち着かせていました。薬を飲むと、孫悟空の輪みたいに頭が締めつけられて、体がだるくて食欲がなくなるから、飲みたくないと時々言っていました。」との一節がある。厚労省の方針通り早期発見された発達障害児ほど多くの場合就学年齢以下から薬剤投与が開始され、多剤・過剰投与
へと進む。発達途上の子どもの脳への影響、長期にわたる化学物質摂取の危険性を製薬会社はどう調べたのか。安全性は誰が担保するのか。解決のためにどうしたらよいのか、模索さえない。
そんな中で「NPO食品と暮らしの安食基金」では2008年から発達障害の子どもたちの症状を改善していくために、ミネラル補給による栄養面からの取り組みを果敢に進めている。会報誌ほとんどの号に個別の症例による障害の改善が報告されており、希望を感じさせる。このことはもっと注目されるべきだと考える。

◇ネオニコチノイドの問題
現在広く使用されるようになったネオニコチノイド系の農薬は日本で開発された。“遅れてきた有機塩素系農薬”ともいわれ、化学式に塩素(Cl)を含んでいるため冒頭に述べたように神経毒性、浸透牲、残留性などが特徴だ。果物、お茶などの農業ばかりでなく、白アリ駆除、家庭用農薬やペット用殺虫剤などにも使用が拡がっている。ネオニコチノイド系農薬は作物への浸透性があり作用が強力なため農薬の散布回数を減らすことが可能だ。大手生協がネオニコチノイド系農薬の使用禁止にうごく中、安全性を標榜する一部生協で、ネオニコチノイド系農薬を禁止せず使用を認めていることは看過できない。ぼんやりしていては健康は護れないのだ。
化学物質過敏症の患者は危険なものを体が感知する。現代社会では他人の使用しているものの多くに反応して苦しむため、危険を知るにはとても便利だがとんでもなくやっかいでもある。日常生活を見渡して健康のためには何を避け何を変えていくべきか、の知識が必要だ。

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