バンダジェフスキー博士の警告  人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響
オルター通信1231号 記事
最近、セシウムの毒性に関する大変重要な冊子が茨城大学名誉教授久保田護氏により翻訳、出版されました。その内容を、翻訳者 竹野内真理さんが要約されましたので転記します。『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響―チェルノブイリの教訓 セシウム137による内臓の病変と対策―』 元ゴメリ医大学長、バンダジェフスキー博士[Dr.Yury Bandazhevsky,1957-]

内容要約

食物中のセシウム摂取による内部被曝の研究がほとんどない中、バンダジェフスキー博士は、大学病院で死亡した患者を解剖し、心臓、腎臓、肝臓などに蓄積したセシウム137の量と臓器の細胞組織の変化との関係を調べ、体内のセシウム137による被曝は低線量でも危険との結論に達した。
*セシウム137の体内における慢性被曝により、細胞の発育と活力プロセスがゆがめられ、体内器官(心臓、肝臓、腎臓)の不調の原因になる。大抵いくつかの器官が同時に放射線の毒作用を受け、代謝機能不全を引き起こす。
*セシウムは男性により多く取り込まれやすく、女性より男性により強い影響が出ており、より多くのガン、心臓血管不調、寿命の低下が見られる。
*細胞増殖が無視できるかまったくない器官や組織(心筋)は、最大範囲の損傷を受ける。代謝プロセスや膜細胞組織に大きな影響が生じる。生命維持に必要な多くの系で乱れが生じるが、その最初は心臓血管系である。
*セシウムの平均蓄積量30.32±0.66Bq/kgにあるゴメリの三歳から七歳の子供は蓄積量と心電図に比例関係があった。
*チェルノブイリ事故後のゴメリ州住民の突然死の99%に心筋不調があった。持続性の心臓血管病では、心臓域のセシウム137の濃度は高く、136±33.1Bq/kgとなっていた。
*ミンスクの子供は20Bq/kg以上のセシウム137濃度を持ち、85%が心電図に病理変化を記録している。
*ミンスクの子供で、まれに体内放射能が認められない場合もあるが、その25%に心電図変化がある。このように濃度が低くても、心筋に重大な代謝変化を起こすのに十分である。
*動物実験で、セシウムは心筋のエネルギー代謝をまかなう酵素を抑制することがわかった。
*平均40-60Bq/kgのセシウムは、心筋の微細な構造変化をもたらすことができ、全細胞の10-40%が代謝不全となり、規則的収縮ができなくなる。
*収縮器官の破損は以下のように観察された。最初にリーシスのないタイプの収縮が現れ、筋形質ネットの毛細管が広がり、ミトコンドリアが膨れ、病巣筋形質浮腫が記録された。これは膜浸透性の不調とイオン代謝の重大変化の証拠である。ミエリン様組織の存在は過酸化膜酸化の増大の証拠である。ミトコンドリア破壊はその増殖と肥大を示し、インターミトコンドリアの数が増えている。持続する機能緊張と増大する酸素欠乏は内皮浸透性の増進で証明され、上記の組織変化の理由となりえる。
*動物の体内の100-150Bq/kgのセシウムはさらなる重大な心筋変化、すなわち、拡散する心筋は損傷、リンパ細胞とマクロファージの病巣浸潤物および血管多血が認められた。
*900-1000Bq/kgのセシウム蓄積は40%以上の動物の死を招いた。
*クレアチンホスホキナーゼ〔Creatine Phosphokinase, Creatine kinase〕のような酵素の抑制により、活力不安定となる。
*血管系が侵され、高血圧が幼児期からも見られることがある。また15キュリー/km2の汚染地の子供の41.6%に高血圧の症状が見られた。(1キュリー=370億ベクレル、従って、15キュリー/km2 =15×3.7×10000=55.5万ベクレル/km2)
*セシウムは血管壁の抗血栓活性を減退させる。
*血管系の病理学的変化は、脳、心臓、腎臓、その他の器官の細胞の破壊を導く。
*腎臓は排出に関与していて、ゴメリ州の大人の死者の腎臓のセシウム濃度は192.8±25.2Bq/kg、子供の死者では、645±134.9Bq/kgだった。
*セシウムは腎臓内のネフロン組織細管や糸球体、ひいては腎臓機能を破壊し、他の器官への毒作用や動脈高血圧をもたらす。ゴメリにおける突然死の89%が腎臓破壊を伴っている。(腎臓機能の破壊プロセスも冊子に詳述されている)
*血管造影で組織を検査すると放射線による腎臓の症状は特徴がある。また病気の進行が早く、悪性の動脈高血圧がしばしば急速に進む。2-3年すると、腎臓の損傷は慢性腎機能不全、脳と心臓との合併症、ハイパーニトロゲンミアを進展させる。
*肝臓においては、毒性ジストロフィーが増進し、細胞たんぱく質の破壊や代謝形質転換が起こり、胎児肝臓病や肝硬変のような厳しい病理学的プロセスが導かれる。
*肝臓の合成機能の不調により、血中成分の合成に変化が生じる。30Bq/kg以上の子供の体に肝臓機能の不調が見られた。さらにすい臓機能の変化も観察されている。
*ゴメリ州で、急死の場合に肝臓を検査したところ、セシウム137の平均濃度は28.2Bq/kgで、このうち四割に脂肪過多の肝臓病か肝硬変の症状があったという。
*セシウムは胎児の肝臓病を引き起こし、その場合胎児は肝臓に限らず、全身の代謝の乱れが生じる。
*免疫系の損傷により、汚染地ではウイルス性肝炎が増大し、肝臓の機能不全と肝臓ガンの原因となっている。
*セシウムは免疫の低下をもたらし、結核、ウイルス性肝炎、急性呼吸器病などの感染病の増加につながっている。免疫系の障害が、体内放射能に起因することは、中性白血球の食作用能力の減退で証明されている。
*セシウムは、甲状腺異常にヨウ素との相乗関係を持って寄与する。免疫グロブリンと甲状腺ホルモンの間で相関関係があり、これらのホルモンは、セシウムによって代謝系統が乱れることで放出され、大量の甲状腺刺激ホルモンが出ることにより、甲状腺を刺激し、小胞上皮を増殖させ、ガン化につながる。
*セシウムが長期間体内にあると、甲状腺の回復プロセスが十分な値にならず、細胞分化が壊され、組織細胞要素が免疫系のアンチエージェントに転化しやすくなる。免疫反応の上昇に伴い、自己抗体と免疫適格細胞が甲状腺を痛め、自己免疫甲状腺炎や甲状腺ガンが導かれる。
*体内のセシウム濃度が増すとコルチゾールのレベルも高まり、胎児が子宮内で病気になりやすい。
*セシウムは女性の生殖系の内分泌系機能の乱れをもたらし、不妊の重要因子となりえる。また、妊婦と胎児両方でホルモンの不調の原因となる。
*妊娠すると母体内にセシウム137は顕著に蓄積する。動物実験では、着床前の胎児死亡の増加、骨格系形成の不調、管骨の成長遅れと形成不全が現れた。
*セシウム137は基本的に胎盤に蓄積するものの、胎児の体内には入らないが、母乳を通じ、母親から子供に汚染は移行する(母乳をあげることで母親の体の汚染は低減される)。多くの系がこの時期に作られるので、子供の体に悪影響を与える。
*子供とティーンエージャーの血液検査で、赤血球、白血球、血小板の減少、リンパ球の増大が見られた。ただし、移住した子供に、骨髄の生理状態の回復が見られた。
*神経系は体内放射能に真っ先に反応する。脳の各部位、特に大脳半球で生命維持に不可欠なモノアミンと神経刺激性アミノ酸の明らかな不釣合いがおき、これがやがてさまざまな発育不良に反映される。
*体内放射能レベルの高い子供(ベトカ郡、15―40キュリー/Ku)では、視覚器官の病気、特に角膜の病状を伴う眼レンズの変化の頻度が高い。また体内のセシウム137と白内障発生率の間に正比例関係が明瞭に見られた。
*子供の体内にセシウムが(19.70±0.90Bq/Kg)が長期入ると慢性胃腸病を起こし、自律反応のハイパーシンパチコトニー変化に現れる(引用注:Hypersympathicotonia:交感神経緊張過多)。
*セシウムの濃度に応じて、活力機構の破壊、たんぱく質の破壊が導かれ、組織発育が阻害される。
*セシウムの影響による体の病理変化は、合併症状を示し、長寿命体内放射能症候群(SLIR)といわれる。SLIRは、セシウムが体内に入ったときに現れ、その程度は入った量と時間とに相関する。
*SLIRは、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、胆汁の系における組織的機能変化で明らかになっている。
*SLIRを引き起こすセシウムの量は、年齢、性別、系の機能の状態に依存するが、体内放射能レベルが50Bq/Kg以上の子供は器官や系にかなりの病理変化を持っていた。(心筋における代謝不調は20Bq/Kgで記録された。)
*汚染地帯、非汚染地帯の双方で、わずかな量の体内セシウムであっても、心臓、肝臓、腎臓をはじめとする生命維持に必要な器官への毒性効果が見られる。
*セシウムの影響は、ニコチン、アルコール、ハイポダイナミアと相乗して憎悪される。
*1976年と1995年のベラルーシの比較。悪性の腎臓腫瘍が男4倍以上、女2.8倍以上。悪性膀胱腫瘍が男2倍以上、女1.9倍以上。悪性甲状腺腫瘍が男3.4倍以上女5.6倍以上。悪性結腸腫瘍は男女とも2.1倍以上。
*ゴメリ洲では腎臓がんは男5倍、女3.76倍。甲状腺ガンは男5倍、女10倍となった。
*1998年のゴメリ洲での死亡率は14%に達したが、出生率は9%(発育不全と先天的障害者含む)だった。妊娠初期における胎児の死亡率がかなり高かった。
*セシウム汚染地の住民の先天的進化欠損が毎年増大している。ここでは多因子欠損が第一位である。
*セシウムの排出に、カリエイ土を加えたペクチン製剤のペクトパルは最も将来性がある製剤のひとつである。
*しかし、セシウムが人体に入るのを防ぐほうが、セシウムを排出したり乱れた代謝を正常にするより容易なことを心に留めるべきである。


今週の本
チェルノブイリ事故後、10年にわたって、ベラルーシの放射能汚染地区に居住する数千人を対象に、病理解剖を含む医学的生物学的調査を実施し、動物実験と合わせて、各臓器に取り込まれた放射性セシウムの量と病変との関係を評価した論考。原論文を併載。

合同出版
注文番号「50500」
「放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響」
ユーリ・バンダジェフスキー(著)126頁
翌々週届


戻る